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2007年8月

2007年8月30日 (木)

別れ出会い

先日、恋人と別れたばかりで傷心の友人、ミツオを行きつけの飲み屋で励ましていた時の話である。



最初は他愛もない世間話などを談笑とともにしながら、和やかなムードで酒を飲んでいた。その日行った飲み屋はカウンター席9つテーブル席4つの小さなバーだ。いい感じに酔ってきた頃合い、ミツオはグラス片手に少し寂しい顔をしながら呟いた。

「まぁ、ミサと別れて…もちろん寂しい気持ちもあるけど…。久しぶりにフリーになれて、これから楽しみな気持ちもあるよ。」

カラン──。静かな店に響くグラスの中の氷の音。寂しさを影に秘めた笑顔を私に見せた後、酒を呷り始めるミツオ。それから長い夏の夜、私達は将来のこと夢のことなど、酒とともに語り合った。



とかなんとか、そんなクールな感じで夜は過ぎて行ったのだろうとミツオは思っていたが、そんなことは全然なかった。ミツオは笑顔の影に寂しさを秘めるどころか前面に押し出していた。というか号泣していた。勢い余って失禁もしていた。

ミツオは先ほどのような強がりながらもにじみ出る寂しさは隠し切れない、と見えるような事を言ったつもりだったが、実際現場に出された音声は嗚咽も混じって「あぅひぐ…おれ…振られ…ひく…ミサは違うあおとこひぐ…おとことああああ、、、!えーーーーああああ!!」とかだった。落ち着いた雰囲気の店の中、床に転がり体液まみれでのたうちまわるミツオ。

最初は慰めつつもなだめていた私だったが、周りの視線が次第に、確実に痛いものになって行くにつれ心底帰りたい気持ちになっていた。ところが、荷物を手に持ち隙を見て走り去ろうとする私と、すでに体液で水溜りを作り始めている友人、男二人の席に一人の女性がやって来た。



最初はミツオのあまりのハジケっぷりに店員が注意をしに来たと思ったが、明らかに客の格好をしている。キレイなロングの黒髪、スラっとした体型で、顔も含め麻雀漫画「兎-野生の闘牌-」のユキヒョウがそのまま出てきたような女性であった。

「あの…大変失礼ですが、お話を聞かせて頂きました。先日、恋人と破局なさったそうで。」

この女はいきなり何を言い出すのか。わざわざ火に油を注ぎに来たのか。私は腹立たしさを隠し切れない表情で彼女を軽く睨んだ。ミツオは突然キレイな女性が話しかけて来たので勃起していた。

ところがその女性は驚きの言葉を放った。

「私…その…。あなたの様な公共の場で失禁をするような…男の人が…その…大好きなんです。」



呆気に取られる私達。話によるとこうだ。彼女はミツオのようないじけた男性が好きで、更に言うと男性が究極にいじけ、失禁している様子に興奮してしまうらしい。だが、もちろん現実にはなかなかそんな男はいない。いつしかそのような男性を見つけることは諦め毎日を坦々と過ごしていたが、今日体液に浸かったミツオを見かけ運命を感じ、思い切って話しかけたらしい。

捨てる神あれば拾う神あり。その後の女性からの交際の申し出を、ミツオは二つ返事でOKした。不幸のどん底から一転、幸せの絶頂に登ったミツオ。人生何があるかわからない。私は少々妬ましく思ったが、親友のミツオが幸せならそれは私の幸福でもある。



…それから2週間程たったが、周囲も妬むようなラブラブっぷりのようだ。ミツオもすっかり骨抜きらしい。もちろん私もちょっと妬けるくらいだったが、今日二人で大きな買い物(298万円の掛け軸)もするくらい仲が進展してるようだし、速攻携帯番号を変更しつつ暖かく見守っていこうと思う。

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