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2006年11月11日 (土)

小さなことから

「出来ないことは無理にしなくていいの。それよりも、自分で出来ることからコツコツとやることが大切なのよ。」


当てられた問題の答えがさっぱりわからず、黒板の前で立ち尽くしている僕を先生が優しく諭した。僕はこう思った。出来ることからっつうか1mmも出来ないから、黒板に1文字も書けずにこうやって皆の前で阿呆みたいにただ茫然と立っているんだよちくしょう。バカにしやがって。一発罵声でも浴びせて教室から飛び出して行こうか。だがその先生が若く小柄で、そしてキレイな先生だったので「そっすかーえへへー」とかなんとかヘラヘラ言いながら席に戻った。


しかしその言葉は予想以上に私の心に重くのしかかっていた。いつも「何かを見つけなさい。勉強が駄目でも、なにか誰にも負けないようなものを見つけなさい」と言われていたのだ。教育熱心な先生だった。自分に何が出来るんだろう。僕はこの学校に来て何を学ぶのだろう。ただ給食を食べに来ているだけなのだろうか。学生生活が貴重だと言うことは僕にもわかる。そして、あっと言う間に過ぎることも。妙に深刻な気持ちになり、2日くらい学校を休んで考えた末、ある時、ハッと、自分にも得意なものがあるじゃないか、そう気づいた。


翌日、学校に行き、それを証明したかったため、放課後先生に残ってもらった。


「諏訪くん、話があるって言ってたけど、どうしたの?」


「先生、あったんだ。僕にも、得意なものが。やりたいことが。やっと見つかったんだ!」


先生は、嬉しいような、また、期待に満ちた表情をした。


「まぁ、そうなの!先生嬉しい。…本当に嬉しいわ。その…やりたいってこと、先生に教えてもらえるかな?」


自信に満ちた顔でうなづき、やおらズボンを脱ぎ準備を始める僕。一瞬なにが起こったかわからず固まった後、悲鳴を上げる先生。準備万端の愚息を慰め始める僕。がむしゃらにしごき続ける僕。


「先生、これなんだ。僕、これが得意なんだ。生来の手首の柔らかさを生かして、誰にも真似できないストロークを生み出し、常人には味わう事の出来ない快感を得ることが出来るんだ!先生、僕これなら誰にも負けないんだ!」


もちろんオナニーは全く生産的なことでもないし、褒められることでもない。ただ、先生に褒めてもらいたかった。自分にも得意なことがある、誰にも真似できないことがあると、先生に知って欲しかったんだ。そのときの私は純粋で、真っ直ぐすぎた。もちろんそのときのペニスも真っ直ぐに先生を向いていた。悲鳴を聞き駆けつけた他の教員に発見され、体育教師に殴られ、親が来て、泣いて謝って、他色々あったと思うが茫然自失となっていたので覚えていない。



…大人になった今、そのことを思い出しちょっと恥ずかしく、いや、死ぬほど恥ずかしい心持ちになる。しかし、あの時の、あの真っ直ぐな気持ちは果たして悪いものだったのだろうか。それが良い事か悪い事はとにかく、自分にも自信が持てる事を持ち、成長して行こうと、ただがむしゃらに前へ向かって走ろうとするようなあの気持ち自体はダメなものだったのだろうか。私にはわからない。今の私にわかるのはあの時はただ先生に見られながらオナニーしたら気持ち良いだろうなと思っていただけだということだ。

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